今、朝ドラにも出てくる「大草原の小さな家」シリーズ。
ローラ・インガルス・ワイルダーが娘に勧められて書き起こした、自伝的な小説だ。大人も楽しめる文庫本シリーズもある。
その中の「長い冬」という巻に、全巻を通して忘れられない場面がある。描かれているのは厳しい冬を過ごす一家の姿。
雪に埋もれた一家の住む町に物資を届ける命綱の蒸気機関車が、大雪で来られない。一家の納屋にはもう貯蔵されている農作物はない。汽車が運んでくれる食糧を待つ一家。ジャガイモを分け合い、小麦粉を手に入れるために雪の中を必死の覚悟で出かける。広大な土地ゆえの飢えと隣り合わせの生活。こういうところからアメリカはできてきたのか、と認識を新たにする巻だ。
ローラの「母さん」は汽車が運んでくる新聞の続き物の読み物を少しずつ子どもたちに読み聞かせる。「もっと読んで。その先はどうなるの?」と子どもたちがたずねても、「今日はここまで。お楽しみはまた明日ね。」と言って我慢させる。
本を読むのは本当に楽しい。明日はのんびりできるという日の夜などは、一気に読み終えてしまいたい。ほぼ徹夜で読み切ってしまうこともある。
ところがインガルス一家はそうではない。読んでしまえば次はないのだ。ローラの母さんはそれを知っている。だから少しずつ、少しずつ読み聞かせる。そうやって我慢することを教える。我慢はつらいかもしれないが、ローラたちは続きを楽しみに、毎日わくわくする生活を送っていたに違いない。
「すぐに〇〇」「いつでも〇〇」と、どんどん生活が我慢しなくてもよくなっている今は、もしかしたらわくわく度も下がっているのかもしれない、と今の生活をふりかえってみる。
「明日にとっておく」そんな姿勢を忘れないように、自分の気持ちを抑えなくてはならない時はローラの母さんにご登場いただくことにしている。
一方で、借りた本を読み終えてしまうと我慢ができず、開館を待って図書館に飛び込むのは、娯楽の少ない田舎暮らしの常ということでお許し願おうと・・・。結局、自分には甘い高齢者夫婦だ。