「楽しくて仕方がない。」
と古民家の主は言う。
いったいどこが・・?と思っていたが、山に登ってみるとなるほど、わかるような気がする。
「自由に自分の思い通りに道を作ったり、段々を作り上げたり・・。まるで巨大なキャンバスに向かって創作しているよう。」・・・だそうだ。
うーん、こういうのを男のロマンというのかなあ。お世話になっている車屋さんのご主人も、自分の趣味の世界を修理工場の中に広げていたっけ。
倒木の枝を切り落として階段を作る。朽ちた竹を粉々にして土と混ぜる。ならしたところにスイセンの球根やアンズの苗を植える。来年は、再来年は・・・と夢が広がるのだろう。
春分の日も過ぎ、日が伸びてきたので、明るいうちはなかなか下山しない。時々のぞきにいく。夢中で作業中だ。構想を練っているのか、ときどき腕組みをしては山全体を見渡す。
「すごいね!」
「まだまだ!」
夕食ができても降りてきそうもない。裏山に向かって叫ぶ。
「そろそろ六時になるよー!」
巨象の足もとは居心地がいいらしい。