「トマトを5袋買って500円入れてきたけど、家に帰ったら6袋あった!100円届けたいけど、どこのお宅なのかわからなくて・・。」
こんな電話があった。
「大丈夫、ご近所だから届けておきますよ。」
と、電話を切る。
こういうお客さんっていいなあ。さっそく100円玉をポケットに入れてご近所の農家さんに届けに行く。
「わざわざ、悪かったねえ。」
うれしそうだ。どの野菜も一袋100円だけど、必ずしも正しく入金されている日ばかりではないらしい。だから、こういう誠実な出来事は嬉しくなる。
大井川上流から続く県道は右岸、左岸とも一本ずつしかない。観光客にとっても地元民にとっても大動脈だ。古民家の主が交通安全立哨でのぼりを持って立っていたら30分間に500台もの車が通った、と驚いていた。
その道端に点在する小さな小屋は、農家が出す直売所だ。ほとんどが100円売りだが、名産のみかんは200円だったりする。
こちらのお宅はいつも古民家コンサートに野菜などを出品してくれている。年齢をきくとびっくりしてしまうが、現役の農家さんだ。ビニールハウスも上手に使って、季節を先取りした立派な野菜や果物を次々と道端の100円ショップに並べる。
毎朝、野菜や果物が並ぶのを待っていたかのように、車が次々と停まる。つやつやした新鮮でおいしい野菜なので、午前中で売れてしまうことが多い。
農業には定年がない。毎年毎年体験的に学んでいくからどんどん野菜作りの達人になっていく。いいなあ。こんな風に年を取っていきたいなあ、と思う。
「あそこにイチジクが出たら今年も買っておいてね。」
と、知人から早くも8月の百均の予約が入った。